慌ただしいけれど目標に向かって皆で進むって楽しい。
何かを一から創り上げることは難しいと思っていたけれど、きっかけさえ掴むことができれば、後はするすると引き摺られるように浮かんでくる。
今回の場合はブライダルとテーマは決まっているから、花の色、種類、形などがイメージしやすい。
高杉さんと岩倉さんの主導の元、展示会に向かって着々と作品の案が固まっていく。
「来るたびに作品が増えているから楽しみだよ」
山中さんは作品のイメージ図を見ながら事務所にいた。
事務所に三台並んだ机のうち、二台を見渡す配置にある机で。最初は高杉さんの机だと思っていたけれど、山中さんの机だったんだ。
展示会の仕事の話を聞いた日から、山中さんは毎日店に来るようになった。私たちの進捗を確かめて、彼からもいくつかのアドバイスをしてくれる。
私はあれ以来、川畑さんに連絡は取っていない。
毎日来てくれる山中さんに対して川畑さんのことは言えない。金柑ジャムのことも確認できたから、川畑さんに会う理由はもう無くなってしまった。
もしも次に会う理由があるとしたら、田舎の両親に会ってもらうことになった時だろう。
でも、もう川畑さんは私の仕事を請け負ってはくれないかもしれない。覚悟はしているけれど、やっぱり辛い。

