「慧……」


目を見開き、私を見ている社長を横目に
コツコツとローファー特有の靴音を響かせながら机の上の書類に目を通す。

そして、書類の中から1枚の紙を
ヒラッと抜き出した。


「社長、お願いします」


ペコッと深々と礼をし、そのままその紙を前に出す。


「あと、1週間…いいえ、あと5日
私に時間をください。」


頭を静かに持ち上げる。


「どうしても諦めたくないんです。
どうしても……羽崎くんに私の曲を歌って
貰いたいんです。
私がなんとしても、説得してみせます!
だから……」


そのとき、ハァと盛大なため息が響いた。
社長が片手で頭を抱えている。

「わかったわ。慧はこうなったらもうきか
ないもの」


「それじゃ…!」


「社長が許可します。
絶対に羽崎くんを捕まえてきなさい」




「はい!」