“君想い恋詩”









「………じゃあ、なんでオーディションを
受けたの…?」


私は、うつむく羽崎にそう問いかけた。


なるつもりがないのなら、
最初からこの世界に足を踏み入れなければ
済むこと。

それなのになぜ。



「…母の薦めで、
オーディションを受けたんです」


お母さん…?


私は羽崎からお母さんに視線を移す。



「母は音楽が昔から大好きだったから。
俺も母の影響で
音楽が好きになったんです」


羽崎はゆっくりと
でも、しっかりした声で私に話しかける。


「だから、母は俺の夢を応援してくれまし
た。 いや、母は俺が何になりたいって
いっても応援してくれたと思います。
母さんはそういう人だから」



優しい瞳を母親に向ける羽崎。

本当にお母さんが大好きなんだなと思った。


「だけど」


いきなり、羽崎の声の質が変わる。
瞳にも影がよぎる。



「オーディション終了後のことでした。
母の容態が急変したんです。
………今日みたいに…。

そのころ調子良かったから
安心してた……気を抜いてた、油断してた
……俺が、母さんを危険な目に合わせた。

母さんは俺のせいで、無理してた。
でも俺に心配かけないようにって
平気なふりして……そのせいで……」



少し掠れた声で途切れ途切れに羽崎はそう語った。



「だから、もう
母さんに心配かけたくない。
俺が……夢を追い求める資格
なんてない」




『夢を追い求める資格なんてない』


「それは違うわ」



私の口からは自然とそう零れていた。
羽崎は「え…」と、か細い声を漏らす。



「誰にでも、平等に夢を追い求める資格は
あるはずよ。
私にも、お母さんにも、
勿論……君にも」



羽崎は伏せていた顔をあげ、私の方を見る。



「君は、前に進むのが怖いだけ。

君が前に進む準備はもう出来てるのに。
その一歩を踏み出せない。

それは、なんで?
お母さんのせい?お父さんのせい?
違うでしょ?
君は本当はわかってる。

お母さんが、どうこうじゃない。
全部、君自身の問題だよ。

だって、お母さんは
君をもう許してる。
ううん。最初からせめてなんかいない。

それは…これを見ればよくわかるわ」



私は窓際に飾られている
花瓶を1つ手に取る。



「『ホワイトレースフラワー』…?」


「そう。この花には、お母さんの羽崎くん
への想いが込められている」






ホワイトレースフラワーの花言葉は

永遠の感謝




「お母さんは、
毎日君に感謝してたんだよ。

だから、この花がいいってきかなかった
んだと思う。
君への感謝をいつも、伝えてたんだよ。

それから………」



窓際の小さな鉢植えに視線を移す。

鉢植えに植えられているのは



『ブライダルベール』



3枚の可愛らしい花びらをつけた小さな白い花。


「お母さんが無理したのは、
君に歌手になってほしかったから。

君に……幸せになってほしかったから」





ブライダルベールの花言葉は

あなたの幸せを願っています




「この病室は、こんなにも
お母さんからの君への愛で溢れてる」



病室は一見無機質で寂しいかもしれないけど、でも本当はこんなにも





暖かい