「羽崎くん…!」
彼はびくともしない。
ただただ、前へと進んで行く。
今の彼には多分、私の声なんて届いていない。
羽崎くん…なんでそんなに泣いているの?
本当に泣いているわけではない。
でも、彼の背中が泣いているみたいに
弱々しいから。
今すぐ、行かなくちゃ。
そう思うのに……
なんでなの。
自分の足が固まったように動かない。
動け。私の足。
なんで、動かないの…?
このまま、、また諦めるの?
なにもせずに、ただ帰るの?
彼をまた、独りにするの?
私の足を止めているのは何?
羽崎くんへの恐怖?それとも、怒り?
ううん違う。羽崎くんは悪くない。
私の足を止めているのは、自分の弱さ。
私は、弱いから。
独りじゃ何もできない弱虫だから。
ー違うよ。
1つの声が胸に響く。それは、とても懐かしい声。
ー晴瀬慧は、弱虫なんかじゃないよ。
違わないよ。どうせ独りじゃ何もできない。
ー貴女は、そんな弱くない。
私は、弱いよ。どうしようもなく弱い。
ー貴女は、強い。
強いふりをしているだけ。
本当は強くなんか、ない。
ーわかってるよ。
貴女になにがわかるっていうの?
なにも、知らないくせに。
ーわかるよ。だって、私はもう一人の貴女
だから。
もう、一人の私?
ーだから、わかるよ。
貴女は、強いから
こんなことで立ち止まるわけがないって
こと。
優しいこの声。暖かいこの声を私は知ってる。
ーさぁ、進んで。
怖いことなんてなにもないよ。
本当に怖いのは、
自分が自分じゃなくなること。
貴女が本当に恐れているのは、
自分が傷つくことじゃない。
大切な人が傷つくこと。
そうだ。私は、傷つけたくないんだ。
これ以上、大切な人を傷つけたくない。
もう、嫌なんだ。
人が傷つくのを見るのは。
もう、嫌なんだ。
大切なものを失うのは。
嫌なんだ

