ーーザワザワ



校門の辺りが明らかに騒がしい。


足早にその方へと足を向けた。


人混みを掻き分けて、その人物のもとを目指す。


そこにいたのは……




「……晴瀬慧」



門の脇の柱に背中を預け、うつむいている
彼女の姿だった。


彼女は伏せられた顔をふっとあげ、俺に視線を向ける。


「羽崎くん」


よく通る声で俺の名前を呟く彼女。

戸惑う俺に、
静かに、だが芯のある声で


「……ごめんなさい。
やっぱり私、君を諦めたくない。」


そう言った彼女に、迷いはなかった。




なんで。

あんなこと、言ったのに。

もう関わりたくないはずなのに。


両拳にぎゅっと力がこもる。


「俺は…」


また、揺れてしまう。

思ってしまう。でも。だけど。





そう、心の中で想いを反芻させている時、
携帯の着信音が鳴った。


ゆっくりと携帯を取りだし、
そして、画面を見て固まる。




その電話は病院からだった。



その瞬間。
一気に現実に引き戻される。


そうだ。俺には最初から……




選択肢なんて、1つしかないんだ。




《十哉side》終