ここは事務所のレッスンルーム。
私は椅子に腰掛け、まえのめりの状態で
テーブルに突っ伏していた。
「………はぁ」
自然と口からため息がこぼれ落ちる。
いったい、もう何回目だろう。
「………はぁ」
ほら、また。
ため息のこぼれる理由は
人それぞれ色々あると思うが
私のため息は、「ある悩み事」のせいで
こぼれている。
ある悩み事とは………
「けーいっ!」
テーブルの上に肘をつき
頭を抱えている私の肩にポンッと何かが置かれ、それと同時に聞き慣れた声が響く。
「………たかちゃん」
「ヤッホー!久しぶり」
それは、私の昔からの幼馴染みの
橋下 隆盛【ハシモト タカモリ】だった。
「どうしたの、仕事は?
確か、ハワイで撮影じゃなかったっけ」
撮影というのは、
雑誌のモデル撮影のこと。
実はこのお方
人気俳優の 蓮見 苑 その人なのだ。
今や、俳優業だけではなく
モデル業もこなす。
うちの事務所の看板俳優なのである。
ちなみに私は、
昔から「たかちゃん」と呼んでいる。
「早めに終わらせて
超特急で帰ってきた!」
右手は腰にあてて、左手はピースをつくり
前に突き出すポーズで
とびっきりの無邪気な笑顔をこちらに向けるたかちゃん。
ま、まぶしいっ!
さすが、今 老若男女とわずに
人気な俳優なだけある。
「相変わらず、仕事が早いね」
そう、感心して言うと
「早く慧に会いたかったから」
と悩殺スマイルで返された。
そんなこと言われたら
世の女性は勘違いしちゃいますよ。
ま、私はしませんが。
昔からこんな感じだから
もう慣れてる。
なんたって、幼馴染みですからね。
「ところで」
私がそんな考えを巡らせている最中
たかちゃんの声が耳に響いた。
「慧は、今何に悩んでるの?」
たかちゃんは優しい声音でそう私に問いかけた。
「なんで、わかるの?」
私が、なにかに悩んでるってこと……。
「慧の顔見ればわかるよ。
いつもより、元気ない」
「…そんなに私、顔に出てた…?」
「慧は昔から、わかりやすいから」
たかちゃんはにっこりと柔らかい笑みを見せる。
あぁ。やっぱり……
「…たかちゃんには敵わないなぁ」
たかちゃんは私より2歳年上。
だから、小さな頃から
私のお兄ちゃん的存在だった。
昔から私のことは、なんでもお見通しで
私が悩んでたらすぐ相談にのってくれる。
「実はね……」
私は今までのことを
たかちゃんに全部話した。

