二人が私を『これ』呼ばわりすることに
対してのムカつきは広い心で受けとめ
二人の会話を黙って聞く。


「羽崎くんがなんと言おうと、
この子の実力は本物よ。
私が保証するわ」


社長の唇が綺麗な弧を描く。


「一回だけでも、信じてみたら?
嘘だと思って」


社長がそう言うと、
羽崎はからだの向きを変え、歩き出した。


「え!は、羽崎くんちょっと!?」


何もなかったかのように社長室を出ていこうとする羽崎を、社長はあわてて引き留める。


すると
羽崎は、ドアノブに手をかけ
そのまま、クルッと向きをこちらに向けた。


「お断りします。
俺、そんな危ない賭けに自分から
乗っかるほど馬鹿じゃないんで。
それに……」


私に視線をフッと向ける。
羽崎の口元に笑みが浮かぶ。
それは、純粋なものじゃなくて……
そう、まるでこちらを馬鹿にするような笑み。


「俺が本気で欲しいなら、
こんなお子ちゃまじゃなくて
ナイスバディなお姉さんにしてください」


ーーパタンッ


そう一言残し、羽崎は社長室をあとにした。