「あなたの
プロデューサー兼マネージャーを
務めさせていただきます。
晴瀬 慧【ハルセ ケイ】です。
今日からどうぞよろしく」


ニッコリ笑って、今日から芸能活動を
スタートする新人にお気に入りのピンクの
名刺を差し出して挨拶をする。


「………は?」


私の言葉にポカーンとしたまま佇んでいるのは、今日から 歌手として
デビューする 羽崎 十哉【ハサキ トオヤ】だ。


「……あの俺、大物プロデューサーを
つけてもらえるって聞いてきたん
ですけど」

「ええ、勿論
大物プロデューサーをつけるわ」


羽崎くんの質問にすかさず答えるのは
この『晴瀬芸能事務所』の社長
晴瀬 京香【ハルセ キョウカ】。
私の実の母だ。


「我が事務所の大物プロデューサー
晴瀬 慧を」


羽崎くんは自信満々にそう言った母……いや社長の言葉が、いかにも納得いかないという表情を浮かべている。


「いや、どうみても中学生ですよね?
これのどこが大物なんですか」


と羽崎くんは私を指差して社長に問う。


「大物かどうかを決めるのは
年齢じゃないわ。実績よ」


社長室にヒールが床にカツカツとぶつかる音が響く。
そして社長は長く綺麗な髪を揺らし、ポスターが貼ってある壁の前まで歩みでる。


「今、話題の有名俳優 蓮見 苑【ハスミ エン】や
人気アイドルグループbackを発掘したの
は、紛れもなくこの子 晴瀬 慧よ」


苑やbackのポスターにバンッと片手で叩くと社長も私を指差した。


羽崎くんはじっと私を疑うような目で見つめる。


「これが…?」

「そう、これがよ。」