俗に言う壁ドンってやつか。

「こういうのって、少女マンガとか恋愛小説でよくあるけど、まさか自分がされるとは思わなかった。」

「あれ、五十嵐さん、全然照れたりしないね。嬉しくないの?」

確かにさっきよりも断然距離が近いし、イケメ

ンにされてるわけだから、普通なら羨ましがら

れるシチュエーションだろう。

「あれは好きな人からされてるから嬉しいんでしょ。何とも思ってない人にされても不快でしかない。それに私、男の人に興味ないの。悪いけど出してくれない?」

「離したくないって言ったら?」

少しずつ顔の距離を縮めてくる。

「無理矢理逃げる。」

「相手は男だよ?力の差は分かってるよね?」

「ええ、そうね。確かに腕の力じゃ絶対無理だと思う。でも足はがら空きよ?」

そう言って、思いっきり脛を蹴った。

「いっっったああ!!!」

手がパッと離れて簡単に抜け出せた。遠藤はそ

の場にうずくまって、蹴られた方の足を抑えて

いた。

「何も蹴ることはないじゃないか…」

「こうもしないと逃げれなかったでしょ?」

涙目になりつつ訴えてくる遠藤を軽くあしらう。

それにしても痛そうだ。ちょっとやり過ぎたか

な?これで私のことを嫌いになってくれたら嬉

しいけど、怪我をされたら堪らない。