自分の家が見えてくると、もっと速く走った。


いつもなら鳴らすインターフォンさえ押さずに力任せに玄関を開けた。


電気もついてない廊下が、薄暗い。


靴を脱ぎ一歩踏み出したとき、何かの匂いが鼻を掠めた。


何だろうと匂いを辿ると、そこには俺の好物やチョコレートケーキが作ってあった。


カレンダーに目を向けると、今日の日付に大きく赤い丸がされ、“翼さんの誕生日”と書かれていた。


「あっ……」


そっか……。今日は自分の誕生日だったんだ。


自分で自分の誕生日忘れるなんて、馬鹿だろ。