まあ初めて会った頃は 何でも一生懸命で前向きな子だとは思わなかったけどな…
印象も 良くなかったし……
俺と 真琴が はじめてちゃんとしゃべったのは中1の半ばだった。
俺が 付き合ってた彼女と上手くいかなくて 何かグダグダしてた頃だ。
「あれ? 陽向君だっけ?どうしたの?」
真琴は俺と初対面なのに 物怖じせず話しかけてきた。
「ん~? えっと お前誰?」
今 話しかけられても はっきり言って面倒なんだけど………
「あ~~ はじめましてだね!私 川澄真琴。今 和輝と 同じクラスなんだ。 陽向君 仲良しだよね?」
「あ~ まぁね。」
で? 何の用だよ……
俺は 今 とっても悩んでんの!
のろのろ 真琴という 女子の方を向く
「ところで どうしたの? めっちゃ暗い顔してるよ?」
そうだよ……… 暗いんだよ……
俺は 悩んでんだよ………………
でも顔見てみたら ちょっとかわいいし慰めてもらおっかなっっ
だいたい こういう時に話しかける女子って 男意識してんだろ?
「う~ん。ちょっと彼女とうまくいってなくてね」
しんみり 寂しそうに言ってみる。
まあ こう言っちゃなんだけど 俺ってそれなりにモテる。
だから 大概の女子の反応としては 何でも言って!! 悩み聞くよって言ってくるって思ってたんだ…
でも 真琴は違ってた……
あははって笑って
「ふぅ~ん。そっか!悩め少年!!」
って言ったんだ。
慰めるつもりがないなんてこいつ男ウケ考えない女子なんだ。
おかしなやつ………
だけど 普通慰めるだろ?
「あ~ お前に言っても仕方ないよな。
悩みなさそうだもんなっ」
イヤミっぽく言ってやる…
意地悪だったかな?
でも 八つ当たりしたい気分だったし 別に友達でもないしな………まぁいっか!
そしたら 真琴は嫌な顔ひとつしないで
「うん。 脳内快適なんだ!! 私!!!!!! 恋の悩みとかって いいなって思うよ!だって相手いなかったら悩めないもん。」
ねって 笑って俺を見る。
「ふぅ~ん。お前名前だけじゃなくて性格も男らしいんだな。」
ちょっと感心した。
こいつ いい奴なんじゃないかな?
女子って 見た目可愛い奴って性格悪かったり 自己中な奴だって思ってた……
まぁでも性格置いといて 可愛い子と付き合いたいって男心もね………
あるっちゃ あるから… 矛盾だな…
いろんな事 考えながら真琴をちゃんと見た。
男って言ったの 酷かったかな?
ちょっとだけ後悔……
でも 真琴は
「うん。そうだね!真琴君って呼んでもいいよ!」
めっちゃ笑顔だ……
「あっそ」
素っ気なく言ってみる。
「………じゃあ私真琴君だから陽向君はひなちゃんだね(笑)」
はっ?
何でそうなる?
「あっじゃあ行くね!ひなちゃんまた明日!」
真琴が去って行くのを唖然としながら見送った。
そして俺は あれからすぐ彼女と別れた。
悩むのも面倒だったし どうでも良くなってきてたから 潮時だったんだ。
真琴とは あれから会う度に お互い真琴君 ひなちゃん って呼びあい冗談言い合って 笑いあった。
真琴の 前向きな性格も 何事にも精一杯主義なところも 段々分かってきた。
あ〜 ちょっと天然なところもあるな…
今思えば 俺って元カノの どこが好きだったんだろう?
それからしばらくしたら いつの間にか ひなって呼ばれるようになってたんだ。
最初は違和感のあった呼び方が 今じゃ全然嫌じゃなくなった…
むしろ 真琴だけが呼ぶ ひなって言い方が 心地良く感じるのは……
何故だ?

