「ごぉちそうさまでしたぁ!!」


千鳥足でふらふらしてるなか、そんな敬礼ポーズとかとらなくていいから。


「家まで送ってほしいであります!!」


唇を尖らせ敬礼したまま彼女は酒臭い息をはいて元気よく言ってくる。

送り届けるのは構わないが、今日は妙にテンションが高い酔っぱらい方をしているものだ。

あまりこういった所を見たことがないから、新鮮で面白い。

だがしかし敬礼は如何なものかと思う、それもまだ店の前だし。


「わかったから、恥ずかしいことやめなさい。歩けるか?無理なら背負うぞ」


彼女をなだめながら俺は、周囲の目を確認しつつ店から離れる。

ふらふらと危なっかしく付いてくる姿は幼児の頼りない歩きとよくにていた。


「やだ重いのばれちゃうから手、繋いで歩く」


なんだこの可愛い生物は。


「相当飲んだだろ、大丈夫か?」


とてつもなく可愛く面白いから、個人的にはありだが。

文句なのか愚痴なのかよくわからん事を言いながらも俺の手を両手で握りしめてとことこと付いてくる。

寒さとからだの火照りもあってか頬は紅潮し、瞳はとろんと蕩けていて。

普段のさばさばした姿からは想像もつかないその酔いっぷりは清々しささえ感じる。


家路に向かうなか、小さな公園を横切ろうとした時、彼女は少し声のトーンを変えて話しかけてきた。


「ね、哲平」


「どした? 歩き疲れたか?」


首を横にふった。


「んーん、あのね…嬉しかったの今日とっても」


「あー…うん」


結果は無惨だったが。


「私のこと考えてしてくれてたことが、嬉しかったの。行けなくてもね、その行動がすごく嬉しかった」


酔った勢いなのか素に戻りつつあるのか、彼女は真面目な瞳で俺を見つめる。

だから俺も繋いでいた手に力を少し込めて、彼女を見つめる。


「ありがとう、哲平」


赤ら顔の微笑みで彼女はそう、いった。


「お、おう…?」


「私、もっとずっと哲平といたい。幸せな家庭つくって笑ってたい。こんな私でよければ、哲平がいいなら…もらってください」


ちょ、ちょっとまて。

これは所謂あれか、逆告白ってやつなのか?

だが、その前に俺の告白聞かれてる経緯がある場合もその類いにいれて構わないのだろうか。

あの告白はまずなかったことになっているのかすら、俺には分からない。

素直にこれを逆告白と受け止めるべきか、俺のあの告白の返事と受け止めるのかどっちにすれば最善なのだ。


ええい、女にここまで言わせておいてなんだ園田哲平!!

男とあろうものがここで悩んでどうする、今こそあれをだすべきだろうが!!


「俺と…いや、僕と結婚してくださ__」


俺がいい終える前に彼女の唇が言葉を奪っていった。


「ありがとう、哲平。大好き」


そういってまた、口付けを交わす。


色々と失敗だらけではあったが、これは成功ということで収まりそうだ。

俺は腕の中の彼女を一生守ろうと改めて決意し、もう一度口付けを交わした。