…朝方。自分の横で眠る理子の頬をそっと撫でた。

昨夜、何度抱いても、理子が足りなくて、何時までも彼女を抱いた。
…いつしか、彼女は疲れ切って眠りについたが、俺は今尚、
一睡もできずにいた。

…理子は、俺の事をどう思っているのだろうか?
…理子はきっと、俺の事など、何とも思っていないだろう。
もし思っているとすれば、自分勝手な我が儘な男くらいだろう。


・・・自分でもそう思ってるくらいだから。
そう思うと情けなくて、笑えてくる。

心底惚れてる女に、『愛してる』そのたった一言が言えない。
断られるのが怖くて、想いは秘めたまま、ただ自分勝手に
彼女を傍に置いた。


「…今なら、いくらでも愛してるって言えるのに、な」

理子を見つめてそう呟いた俺は、ぐっすり眠る理子にそっと口づけると、
ベッドから起き上がった。

…今日は、日曜日。
日曜も働き詰めだったが、今日は久しぶりに何もない休日だった。

シャワーを浴び、タオルで頭を拭きながら、コーヒーを淹れる。
そして郵便受けから新聞を取るなり、ソファーに腰かけ、目を通す。

せっかくの休みだと言うのに、経済欄が気になり、今後の仕事の事ばかりが頭に浮かぶ。
・・・これはもう、職業病だろう。


「・・・あの」

「・・・」

新聞に集中していた俺は、突然の理子の声にハッとする。

…少し乱れた髪を直しながら、理子はドアから顔だけを出している。
その行為が、可愛らしくて、思わず顔にでそうになるも、何とかそれを抑えた。

「…どうした?」

「…私の服が、ないんですが」

「・・・あぁ、クリーニングに出した」

「・・・え?!」

理子が驚くのも無理はない。最初に来ていた服は、店に置き忘れていた。
と、なると、昨日のドレスしか、彼女の服はないのだから。