俺様社長と秘密の契約

ポケットから、ハンカチを落としてしまった事に俺自身気づいていなかった。

手渡された、それを受け取り、お礼を言おうと、相手の顔を見た。
「ありがと・・・う」

「・・・いいえ」
そう言って、ほんの少しだけ笑みを見せたのは・・・

…誰でもない、俺の意中の人。…清水理子だった。

ハンカチを渡すとすぐに、行ってしまう理子。

「…あの!」
「・・・何か?」

俺の言葉に振り返り、無表情にそう答えた理子。

「…いえ、別に・・・」
それ以外言葉が浮かばず、そう言うしかなかった。

首を傾げた理子だったが、すぐに踵を返すと、そのまま言ってしまった。

「・・・彼女、笑った、よな」
…そうだ。理子は、確かに笑った。笑ったと言っても、ほんの少し、口角をあげた程度にすぎない。

それでも、無表情だと聞いていた理子が、笑みを見せた事が嬉しかった。

そして何より、あの笑顔が可愛いと思った。
・・・もっと、あの笑顔が見たい。

そう思うといてもたってもいられなくなった。

・・・その日以来、俺は、偶然を装って理子に近づいた。
最初は引き気味だった理子も、だんだんと俺との会話になれてきたのか、自然と笑顔を見せるようになっていった。

それが嬉しくて、もっと色んな顔が見たくて、あらゆる手を使った。

俺は、理子の『友人』になれた。

でも、それだけじゃダメだと思った。

友人以上になりたい・・・理子の、彼氏になりたい。

その想いが日に日に増していった。