鈴姫戦記 ~ふたつの悲しい恋物語~






「今までの報告によると、誰も顔を見たことがないようね」



 アンゼリカさんは、革表紙で出来た何かの本を壁に取り付けられた本棚から、取り出した。


 表紙に書かれた字は──読めない。


 ここだけの、言葉?


 英語でもなさそうだし・・・・・・。


 それを机に置くと、みんなでそれを覗き込んだ。



「・・・・・・これは、魔物と、影の世界についての話かい?」



 大人の男の人──銀さんがページをパラパラめくりながら言う。



「ええ、そう」と言いながら、アンゼリカさんは、他の本を物色し始めた。



 しばらくすると、机の上はたちまち本の山で埋め尽くされた。


 それぞれが、本を見始めた。

 

「悪い、ナト。


 お茶のおかわり持ってきてくれないか」


 
 そういって、ナトにカップを押し付けたのは、ナトの母親、ナディーンさん。



「えー! ママが行ってきなよ」


 難しい顔で、本を覗き込んでいたナトが、あからさまにイヤそうな顔をして、カップを押し返す。



「・・・・・・瞬間移動で行けばいいだろ?


 二人とも、得意じゃないか」



 そんな風に毒舌を吐いたのは、銀さんに寄り添うようにしていたエクさん。


 そんな言葉に、超能力者の親子は黙ってしまった。


 確かに。
 
 
 二人の能力は瞬間移動なんだから、一瞬でいけるじゃない。


 心の中でひそかにエクさんに同意した。