ふぅー・・・・・・。
思わず、溜め息が出てしまった。
あの日、寝ちゃってから絖覇はいつのまにか帰っていたらしい。
あたしが起きると、もうすっかり外は暗くなっていた。
階段を降りて居間にいけば、お父さんがお茶を飲みながらゆったりとしていた。
最近お父さんの夕方の日課になっていた、お母さんとの話は終わったらしい。
「りん、もう元気か?
話はナトと絖覇に聞いたぞ」
ほら、とお父さんがもう一つのカップに注いであった紅茶を進めてくれる。
お父さんの横に座ると、湯気の立ち上るカップを両手で掴んだ。
ふんわりとした爽やかな紅茶の香りが鼻をくすぐり、気持ちが落ち着いた。
あぁ、美味しい。
一気に熱い紅茶を飲み干せば、お父さんがクスリと笑った。
「りん、お前本当に熱いもの大丈夫だな。
舌、火傷しなかったか?
そういえば、お母さんもそうだったなぁ・・・・・・」
お父さんが昔を懐かしむように天井を見上げていった。
へぇ、そうなんだ。
あたしはどっちかといったらお母さん似だっていわれるしね。
「それより、お父さん。 ご飯食べよう。
今日はあたしが作るよ」
「お前は疲れてるだろ? 俺がやるよ」
「いいの、いいの、あたしはしっかり休んだし。
お父さんだって疲れてるでしょ?
それに、あたしが作りたいの」
「・・・・・・そうか、それならお願いする」
「・・・・・・うん」
あたしはエプロンをつけると、キッチンへと向かった。
一応料理は出来るけど、上手くないし得意でもない。
でも、なんだか自然とそう、口走っていた。
お母さんのことを話すお父さんが、余りにも弱々しく見えて。
気をつけていないと、儚く消えてしまいそうで。
ずっとお父さんは弱音を吐かなかった。
それでも、雰囲気でわかってしまう。
どれだけ、お父さんが弱ってしまっているのか。
こんなにも、お母さんを大事にしているというのがわかってしまう。
お父さんからしたら、お母さんが最初で最後の運命の恋人なんだろうなぁ・・・・・・。
しかも、1000年越しの恋。
よく考えたら、すごいことだよね。
だって1000年も同じ人を想ってるんだよ?
初恋にやっと気づいたあたしにとったら・・・・・・ありえないような感じだよ・・・・・・。