教室に帰ると、
井岡が心配そうに近寄ってきた。


「おトキちゃん、どした?大丈夫??」


私の本名。

時間の時と書いてトキ。

最初に「お」をつけると
おばあちゃんの名前みたいで

小さい頃はそれがすごく嫌だったけど

今ではなんとなく気に入っている。


高校でも、仲良くなった子は
大抵私のことおトキ、とか
おトキちゃんって呼ぶ。



「大丈夫だよ・・・ありがと。」

「男には分かんないんだよーっ!」


少し気まずくなりそうだった空気を
真美が断ち切ってくれる。



「時!今日の放課後、寄り道して行こうよ!ほら!今日ドーナツ100円!」


「え!ちょ、真美!それ今日俺と行く約束だったんじゃん!」


「言ったでしょ!男には分かんないの!今は時優先っ!」



真美は、いつもこうやって
私のことを一番に想ってくれる。



明るく笑う真美を見ると

本当に心が救われるんだ。



「真美、私は大丈夫だから。
井岡と行って来て?」


ここまでのドタキャンじゃ、

いくらなんでも井岡に悪い。


「え、でも・・・」


ほんとに大丈夫だよって笑うと
真美は渋々言うことを聞いてくれた。


「ほんとにダメそうな時は
いつでも電話してきなよ?!
すぐ行くから!」

「うん、ありがと。」