砂糖漬け紳士の食べ方


とはいえ、果たして何をプレゼントにするか結論が出た訳ではなく

とうとう私は百貨店の最上階に行きついてしまった。


最上階は文具売り場で、他の階と比べても客は少なく見えた。



「………文房具か」


しかしいざ階を見て回ると、なかなかに良い品物が揃えてあった。


考えてみれば、あの子は曲がりなりにも編集者で、文字を多く書く職業だ。

それにあの年齢であればそろそろ『良い品物』を何か一つ持っていてもいい…。



フロアの隅一角で、私はようやく足をとめた。

いわゆる、高級文具を扱っているコーナーだ。



先ほどの貴金属よろしく、磨かれたショーウィンドウにはキラキラとした高級ボールペンや万年筆が並ぶ。


…万年筆か。

なかなか自分でも買わないものだし、いいかもしれない。


さて、そうすると色は何がいいだろう。

若い子だから、黒や青は似合わないだろうな…。


視線をショーウィンドウに滑らせていくと、実に具合の良い一本を見つけた。

パールに似た上品な白色のもので、留め具も金色。なかなかに良い色合いに思える。



「いらっしゃいませ」

「すみません、この…白い万年筆、書かせてもらっても?」


初老の男性店員は、穏やかに笑い、ショーウィンドウから例の一本を私の前に差し出した。

手に吸いつくような滑らかな体。
適度な重みは、書く時に楽だろう。


「こちらは、『ビスコンティ』シリーズの最新作となっております」

「ビスコンティ?」

「ええ。世界中の有名な画家をコンセプトに、それをイメージした万年筆でございます。
お客様が手に取られているのは、ボッティチェリをイメージしたものです」


「…ああ、なるほど。だから同じような仕様で、ピンク色もあるんですか」

「左様でございます」


ボッティチェリといえば、『ヴィーナスの誕生』や『春』で知られる画家だ。

確かに彼をイメージすれば、このような不透明がかった白やピンクになるかもしれない。


彼女は美術雑誌編集者だ。

何ともちょうどいいものじゃないか。

それに筆先を紙に滑らせた心地も、気持ちがいい。


「じゃあこれを頂けますか」


それ以上考えることなく、私は、白色の万年筆を店員に返しながら言った。