砂糖漬け紳士の食べ方


気付けば私は、正面にあった貴金属のショーウィンドウを覗き見ていた。

シルバーな指輪、可愛らしくあしらわれていた宝石…。どれも見事な出来だ。


「……………」


…指輪か。

これくらいのものであれば、彼女もそう気に病まないだろうし、そこそこに私の自尊心も満たされるだろう。



「いらっしゃいませ、何かお探しですか」


店員がすかさず私の横につき、穏やかな口調で申し出た。

私の目は、ショーウィンドウの右端に小さく置いてあるシルバーの指輪に留められている。


「ええ、…ホワイトデーのお返しに」

女性の店員は、その言葉で実に嬉しそうに笑いを作った。


「そうでございますか。お相手の方のサイズは何号になりますか?」


私はここでようやく隣の店員に顔を向ける。



「サイズ?」

「ええ、指輪のサイズでございます」

「…………」


至極真っ当な店員の問いに、私は口を噤んだ。

彼女の指のサイズなんて、まだ知らない。

それもあったのだが、それよりも『まだ指のサイズすら知らない』間柄でしか無いのに、私がこれを贈って、果たして彼女は素直に喜んでくれるかという疑問が浮かんだからだ。


「…よく分からないな」



誰ともなくぼやいた私に、しかし店員はめげずに言う。


「そうでございますか、指輪のサイズなんてなかなか知る機会のないですからね。
お相手の方のお好みはございますか?シルバーとか、ピンクとか…」



年齢のいった私にすれば、この指輪ですら『ホワイトデーのお返し』にしか他ならない。


だが、まだ20も半ばの彼女からすればどうだ。

もしかしたらそれが『プロポーズ』の如く彼女の気持ちを早々に縛ってしまうのではないか?



「…お客様?」

「すみません、またの機会に」


言うが早く、私はショーウィンドウから遠のいた。

彼女が私のする事で困ってしまう表情なんて、どうしたって見たくない。