『ベールを被った画家・伊達圭介』


若干23歳にして、日展特別賞を受賞。

その突然すぎる才能の突出に、記憶にある方もきっと多いはずだ。

まるで見る者の視線を切るような独特の色遣い。それに相反する、人間愛のテーマ。
伊達圭介のえがく世界は瞬く間に見る者を虜にしたが、日展受賞後は一切マスコミ等に顔を出さなかった。

今回本誌は、彼への独占インタビューを敢行。そのベールの奥に隠された制作現場と、独自の世界観を取材した。


彼に特筆すべきなのは、その圧倒的な画力のみならず、絵のメッセージ性である。


「夜明けの頃」(これはのちに、くだんの日展特別賞を受賞する作品である)という作品では、まるで敗戦時の血を思わせるような濃厚な赤色を使い、男と女が優しく微笑んでいるさまを描いている。

また同年に発表した「来る未来」では、夜を纏うような黒色を使用し、無邪気な子供の笑顔が描かれる。


伊達圭介は、人間の欲をそのまま表す色と、人間の理想の姿をともに1枚のキャンバスの上で成立させる。

これこそが、見る者の心をとらえる一因だろう。


そして今回の新作「遅咲き」も、彼の世界観があますことなく表現されている。

オレンジの穏やかな色と、それに相反する黒色をたっぷりと使い、涙目をたたえながら笑う女性をえがく。


新作におけるメッセージ性について問うも、伊達は多くを語らなかったが、それは見る人それぞれに任せても充分に感じられるのではないだろうか───。