「あ、あの…迷惑みたいですし…、いいです」
カオリさんに対しては有無を言わせないようなセイジさんに、私がそう切り出した。
こんな面倒事に巻き込まれる為にバイトしようと思ったわけじゃない。
「…俺の店、一応バーとして経営してるんだけどね、今重要な役割を担ってた一人が辞めさせられて、すごく困ってるんだよね。
時給はここより高い方だし、接客もあんまり…というかほぼないに等しいし。
個室のお客様に飲食料を持っていって、飲み終わったらそれを回収するのが仕事なんだ」
バーに入ったことがない私には想像すらつかなかったけど、それでも時給良し、少し簡単そうな内容、というのに惹かれた。
けど、隣からカオリさんが私を睨みつけて、断われと催促している。
「カオリ。いい加減にしろよ」
「わ、わかったわよ! けど、どうせその子もこの間と同じようなことになるのよ」
「その時は別の人間を当てればいい」
…………別の人間。
その言葉に吐き気を催しながら、目を逸らした。

