「うるさいよ、カオリ。俺が決めたんだ、レンさんも別に何も言わない。
この子がレンさんに言い寄るとも思わないし。何か真面目そうだし」
そう言ってその人は私を見て笑顔を見せた。
その笑顔が何故か泣きたくなるくらい優しくて、懐かしくて、引き止められた。
「そんな理由でこんな子雇っても、使い物にならないに決まってるでしょ!!?」
怒鳴る彼女の声は本当にこっちまでもが苦しくなるような声で。
「カオリ。俺、口出しされんの嫌いなんだけど」
口調は優しいのに、その言葉には有無を言わせない何かがあって、カオリさんは口を噤んだ。
夥(おびただ)しい空気を纏いながら、男の人を睨みつけて。

