「ちょっとレン! て、うわっ」
後から遅れて入ってきた女の人がレンさんの背中にぶつかる。
そしてまた後からもう一人、男の人が入ってきた。
その時、レンさんの目がやっと、私に向いた。
私の身体はこの場から逃げ出したくて震え、それでもこの場に留まるしかできなかった。
「セイジごめんねー。まだ開店前だし、表から入ってきちゃった。
…てか、なんか女の子の匂いがする…。あ、…めっちゃ可愛い子いるじゃん!!
何この子!え、バイト? え、マジ? ラッキー!」
「………な」
……女の子の匂いって…。
騒ぎ出す後ろの男の人とは対照的に、レンさんは私を睨みつけ、何かを言った。
「え、レン何て?」
男の人は顔をニヤニヤと緩ませながら、耳に手を当てて聞こえないと言う。

