そんな空気の中、カランカランと空虚な音を立てて誰かが店に入ってきた。
入り口の段差を降りる足は長く、細い。
黒のスキニーパンツ。
上はラフな格好で、背が高い。
肌が色白で、切れ長の目は周りが凍えるほどに冷たく感じられた。
………そんな…。
私はその人を見たことがあった。
忘れもしないあの夜、あの公園で、私に消えろと言った人。
「レンさん!? どうしたんですか!?」
セイジさんのその言葉に、私はまた硬直した。
…レンさん。VIPルームを使う人で…、私が受け持つ人?
部屋の隅っこにいる私には気付いていないのか、気付かないふりをしているのか。

