「『grab』っていう店なんだけど、知ってる?」


何故か知ってると言ってはいけないような、そんな雰囲気と視線を受ける。

知らないから正直に答えた方がいいのだろうか…。



「…すみません…、知らないです……ごめんなさい」


そう言うと、カオリさんが目を見開き、額に手を置いた。

嘘でしょ、とでも言うように。



「結構有名なんだよ、俺の店。
 でも知らない方が好都合かもしれない。

 働いてくれる? ユエちゃん」


にっこりと、先程の殺気はまるでなかったかのような綺麗な笑みを浮かべるセイジさん。

その笑みは断るのかとまるで責められてる気分にさせる。