北上は小鳥遊家に代々仕える北上家の子。



梨花と歳がけっこう近いから、昔は「執事とお嬢様」って関係より「兄と妹」って関係のほうがしっくりくるくらい仲がよくて、よくいっしょに遊んでもらった。



でも、いつだっただろう。



北上のお父さんが病気で倒れてから、大人になっていた北上は正式に小鳥遊家の執事として仕えることになった。



そうしたら北上、それまで梨花のことをずっと「梨花ちゃん」って呼んでたのに、急に「梨花さま」なんて呼ぶようになっちゃって。



梨花もずっと北上のことは「翔くん」って呼んでたけど、パパに「北上は小鳥遊家の執事なんだから友だちのように接していてはダメだ」なんて言われちゃって、仕方なく「北上」と呼ぶようにした。



だから、梨花と北上は……今では「お嬢様と執事」だけど、本当は「幼なじみ」っていうほうが近いくらいの関係なんだ。



そう、だから……北上は梨花のことをなんでもわかってる。うっかりしたら直樹やパパよりも梨花のことを知っているかもしれない。



だから北上は梨花が本当は笑ってないことをわかってるんだね。



梨花がためてる気持ちとか、そういうのも……。



「……ありがとう、北上」



その優しいところ、大好き。