そして、ハッと我に返る。
そうだ……今、花火の音に紛れてだったら呼べる。
「……爽太」
ドンッ、ドンッ、と大きな音がする中。
そう呼んだら、驚いたような表情で安田があたしをみた。
「ありがとう、美奈ちゃん」
そして、ふわっと優しい笑顔を浮かべる。
……じゃあさ。
「あたしのこと、美奈って呼んで?」
……あのとき安田が憧れてるって言った、桃花と都築みたいに。
「……いいの?」
「うん」
肯定の意味を含めてうなずくと、小声で安田が言う。
「……美奈」
今日、たくさんの花火が空にあがっていく中。
あたしと安田は、新しい道へと一歩、踏みだしました。

