安田が、あたしに言ったこと……。
「……名まえで呼んで、ってこと?」
「よかった」
あ、当たったんだ!
そういえばそんなことを言ってたよね……。
あたし、あのときどうしていいかわからなくてごまかしちゃったんだったっけ……。
「……まだ、ムリかな?」
安田がじっとあたしの瞳をみつめる。
名まえ呼び……名まえ呼びかぁ。
緊張するけど、安田が初めてあたしにお願いしてくれたことだもんね。
「……わかった、呼ぶ」
「……! ありがとう!」
これまでにないくらいのうれしそうな声をあげる安田。かわいい笑顔も浮かべていて、思わずキュンとする。
と、そんなときだった。
──ドンッ!
「……あ!」
遠くのほうから花火が打ちあがる大きな音がきこえてきた。
時刻はちょうど8時。花火大会だ。
ドンッ、ドンッ、と間髪をいれず打ちあがっていく花火。
赤、ピンク、オレンジ、黄色……カラフルな花火がたくさん夜空に弾けて、そのあまりにもキレイな様子にあたしはずっとみとれてしまっていた。

