《梨花side》
「……さま、梨花さま!」
「……え?」
あれ、北上の声だ。
そうだ……梨花、車の中で寝ちゃったんだ。
あのことを言われていろいろ思いだしてたら、急に泣けてきちゃって。
昔の彼の背中と、爽太くんの背中が重なって……思わず「行かないで」って言っちゃったんだだけど、だれも気づいてないみたいだったから本当によかった。
「もう着きましたよ」
北上に言われて窓から車の外をみると、そこは小鳥遊家の別荘。
梨花がいま住んでる家なんだ。本家のお屋敷はもっと別のところにあるけど、ここは一時の別荘。梨花も詳しくわからないけど、パパが転勤する時とかのためのお屋敷なんだ。
「ああ、ありがとう。……あれ、直くんは?」
「直樹さまはもうお部屋に戻られております」
「じゃあ梨花も戻るね」
車のドアを開けてもらって梨花は降りた。

