梨花はふるふると首を横にふった。
…… “これ” はたぶん、今日の俺の梨花への発言のせいで起こったことだ。
「ごめんみんな」
俺は桃花ちゃんたちに向かって言った。
「梨花、体調が悪いみたいだからここで帰るよ」
俺は涙を必死に指でぬぐう梨花の肩を抱きながら言い、スマホをポケットから取りだした。
みんなに手をふってから路地裏に入り、梨花思いな執事に車を出してくれと電話した。
数分も経たないうちに黒塗りの車がやってきて、中から黒いスーツを着た執事が現れた。
「梨花さま大丈夫ですか!?」
現れたのは執事の北上【きたがみ】だ。
「大丈夫、ありがとう」
梨花が答える。
北上が一瞬だけ頬を赤くしたようにみえたのは、俺の気のせいだろうか。
……車の中で梨花はすやすや眠っていた。
頭をなでてみたら少しニコッとしたふうにみえたから、安心した。

