「でも俺そんな風に思ってるつもりないけど?」
戸田先輩がそう言う
「それは、きっと無意識のうちに嬉しいと思ってるんじゃないですか?」
そんな私の言葉に戸田先輩は あ、そうか と言ってまた左耳を触り始めた
「すいません!今から打撃の練習をするので、誰か2人ほどバッティングピッチャーをしていただけませんか?」
と1年生の花田くんがプルペンに言いに来た
「あ、私行きます!」
「俺も行きたいです!」
そう言った私と永岡くんは、グラウンドへと向かった
バッティングマシーンが2つあるのに対して、ゲージは4つ
だから、ピッチャーがボールを投げる
私はシニアに入った4月1日から毎日のようにそれをするようにしている
西東京の中でも強打だと言われている閑田シニア
そのシニアの人たちに対して投げられることほど練習になることはないと思うから
「オラァァ!!こーーい!」
相変わらずうるさい剛先輩
そんな剛先輩相手に投げるのはこれで何回目だろう
カキーン
「ぬるーい!!」
何を投げても
カキーン
「もっとォォ!」
どんなに力一杯投げても
カキーン
「まだまだーー!!」
打たれる
でも
打たれるうちはまだ、努力ができるから
カシャッ
剛先輩の後ろにあるネットにボールが当たる
「・・・ナイスボールだぁぁ!」
バッティングピッチャーとして出てるのに、本当にバッターを抑えようとするのはどうかと思うけれど
それでもこの一瞬を味わいたい
「ありがとうございます!!」
