あきらめない ~ 青空の下のマウンド ~


「・・・馬鹿かお前らは」


立って見ていた監督はそう言うと私たち3人をよんでコソコソと話した


「あいつは変に力むところがあるから言うなと言っていただろう」


「ですが、もう中3ですし、そろそろ自覚が必要かと…」


そう羽山先輩が言うと、門ちゃんも続けて

「俺もそう思います。俺たちだけじゃなく史花も気づいていたということになると、相手チームにも気づかれている可能性がありますし…」

と言った


普通、投手にダメなところがあれば気づいた瞬間からそれを直させる


それを誰も口うるさく言わなかったのは、その変化が本当に微妙すぎて普通じゃ気づかないということと、戸田先輩が気にしずきて投球に影響が出ることがあるから


「で、どういうふうに変化してるんですか?」


戸田先輩が監督にそう聞いた


「さっき山内が言った通りだ。
お前は、左耳が一瞬だけピクッと動くんだ。フォークを投げるときにな」


「・・・それって結構重要なんじゃ?」


戸田先輩はそう深刻そうな顔で聞いた


「先輩のは投球動作のときに動くんですよ。普通耳なんてあまり見ないですから、逆に気づいた史花がすごいと思います」


門ちゃんが私を見ながらそう言った


「そうだな。
まあ、何度も何度も試合のビデオ見たり、隼人がブルペンで投げてるところを見てるからこそ気づいたことなんだろうけどな」


続けて羽山先輩が言う


「な、なんか照れますね…」


私はそう言って下を向いた