恋愛戦争



「おはようございます。よろしくお願いします」


すれ違うスタッフに声をかけて現場入りしたのは午前8時。はえーよ。

メイクも終えて衣装に着替えた俺は用意された椅子に腰掛け様子を眺める。

そこに、ひとりの男が近づいてくる。


「おはようございます。随分コンディションがいいようで、何よりです」


笑顔ひとつなく仁王立ちしている様はさながら悪党。もしくは正義のヒーロー。騎士様か。

「おはようございます品川さん。」

「昨日の夜はどちらに?」

「ホテルにいましたよ」

「ホテルのどの部屋にいたんですか」


朝からこんなド直球な尋問にあうとは流石に予測していなかった。ああ、撮影前となると面倒だ。


「昨日1時過ぎに南月さんが違う宿泊者の方の部屋から出てきたのを目撃されてます」

「ああ、それね」

「晶はまだ知りません。ただ時間の問題です」

「でしょうね。止める気は無いです」

「先に言っておいたほうがいいのでは?後々の関係に響きますよ」


この男は敵なのか味方なのか、掴むのが難しい一面がある。塩を送るなんて何を考えているのか。


「後々も何も、もう関係ないんで俺たち」

「は?」

「晶には俺から伝えます」

「その言葉は本当ですか?」

「ええ、本当です」


まるで嘘くさい台詞を淡々と言ってのける俺に向かって短い溜息をこぼした彼はじゃあいいです。と踵を返した。


彼が向かうのはもちろん、彼女のもと。わかってはいたけど羨ましい気持ちがあっていつまでもガキのままな自分に嫌気が差した。