重い瞼を持ち上げると、見慣れないデザインの天井と遮光カーテンの隙間を縫って入り込む朝日が目に入る。
となりに彼女はいない。当たり前だ、ここは俺に与えられたホテルの一室なのだから。
バスルームに向かい、仕事前に一度シャワーを浴びようと服を脱ぐ。鏡に映る男は心を映し出したかのような涼やかな表情をしている。
「可愛かったな」
昨夜の彼女を思いだし、ぽつり。あの後疲れ果てた彼女はそのまま眠りについてしまったので、タオルで彼女の体とベットを綺麗にした後に部屋を出た。
朝、万が一でも誰かに同じ部屋から出てくるところを見られたら危ないので、夜が深まる頃に致し方なく部屋を移動した。致し方なくだ。
まるでやり逃げだな、と自分に呆れる。こんな形は不本意だったがそんな俺の感情なんて言い訳にもならない。ベットの上に置いてきたことには変わりない。
熱いシャワーを頭から浴び、脳内のほとんどのスペースを占める彼女の昨夜の姿で上がる温度を押さえつける。
泣きじゃくる子供のように何度も名前を呼び、ふとした瞬間の妖艶な表情に焦った。
「あー、タイミングなぁ」
現実は小説よりも稀なり。まさにその通り、どうやったって思い通りにはいかない。俺の人生ここが最高だったのかも。
これから最悪に向かっていくと思うと気分は下がる一方だが、自分で決めたこと。腹に覚悟をきめていくしかない。
道は出来てる。あとはそれを進むだけ。

