「なぁ、これ晶好きじゃなかった?」
「懐かしい。何年ぶりかに見た」
「よく買ってたじゃん」
「舐めてると炭酸が一気に出てくるのが好きだったの」
車中、後部座席で遠足よろしく菓子類を広げて和気藹々とはしゃいでいると運転席から俺にもーと声が飛ぶ。
「何がいい?酢こんぶ?カリカリ梅?」
「センスが渋い、その飴ちょーだい」
「口開けて」
ぽんっと入れた飴玉を転がす安藤さんは懐かしい味だわぁと、同世代アピールも欠かさない。
「安藤さんの時代って塩舐めてた時でしょ?」
「戦後じゃねぇか」
「違うの?コーラが日本に来て喜んでたじゃん」
「それ俺のひいじいちゃんの時代!」
「へぇ、安藤さんて意外と若いな」
「マネージャーをいくつだと思ってんだよ」
軽井沢行きの車中。主に俺がディスる流れで会話が進み、安藤さんはそんな中でも安全運転に努める優秀なドライバーと化している。
途中でパーキングエリアにも寄ってもらい少し休憩をするも、如何にもこうにも顔が売れてしまっている俺らはトイレ以外は車内で待ち、安藤さんセレクトの軽食を頂く。
「なんか食べてばっかりだね」
「そうだな、たまにはいいだろ」
対して量は食べてないものの日頃から食事には気をつけている俺と、食べない選択をすることも少なくない彼女にすれば多少の罪悪感と満足感を抱くものになる。
「あ、でもこれ美味しい。ナツ食べてみて」
「あー、うん、うまい」
晶から鯛焼きを一口貰いたまにはいいかと思える。

