軽食を食べ終えて数分、全ての欲望に忠実に従い始めた彼女はソファーの上で身体を揺らし、船を漕ぎ出した。
パパッと食器類を洗って、明日に備えるために晶を寝かせようと思っていた矢先にこれ。
正直めっちゃ可愛い。すっぴんだし、オーバーサイズのスウェットのままだし。同棲してる彼女みたい。
ソファーの足元に屈んで揺れる髪を撫でると夢の世界と現実を行き来してるのか、ゆっくり目を開ける。
「晶、ここで寝る?」
「……んん、寝ない」
「寝てもいいよ、俺もすぐ寝るから気にしないで」
「…でも、部屋に帰るよ」
「どうして?このまま寝ちゃいな」
誘惑に誘い込むように頬を手のひらで包むと、温もりが心地いいようで無意識にすり寄って来る。
あとひとおし。
「晶、おやすみ」
現場で張り詰めていた緊張が弾け、ここに来て疲れがぐっと押し寄せたのだろう。その言葉に促されるように素直に目を閉じた。
ものの数秒で深い眠りに入った彼女の警戒心の弱さと、俺に委ねてくれているという心地よさ。
本当なら抱きしめて一緒に寝たいところだけど、懐かない猫に無闇矢鱈と手を出してはいけない。
力の抜けた身体の膝裏と背中に腕を回し、俺の寝室へと運ぶ。その間もと特に起きることのない様子から完全にスイッチが切れたことが分かる。
ベッドに寝かせて布団を掛ける。ああ、もうこの光景だけでヤバい。俺のベッドで好きな女が寝てるって言うだけで、底知れぬ欲望がじわっと湧く。
馬鹿みたいに、どきどきする。
彼女の寝顔はとても美しく、静かな呼吸すらも愛おしくて、心臓に悪い。
灯りを消してそっと寝室のドアを閉めた。今日はもうリビングで寝よう。

