気が抜けるとすぐにへらっと笑う晶は終始、空気のように静かにそこにいる。
「ちょうど出来たから食べよっか」
「うん、ありがとう」
スープ皿に盛りつけたそれをテーブルに置くと、そんな浮ついた晶が眉根を寄せる。
「眉間にしわ寄ってる」
「色が鮮やかな何かがたくさん入ってる」
「野菜って言うんだよ」
「ふーん」
ふざけた会話も持たず、さっさと食べてと促せば恐る恐るすくい、スプーンを口元に運ぶ。
「あ、美味しい!」
「良かった」
パァ!と花が咲くように笑った彼女はその後もまたへらへら笑う。
「食べれる?」
「うん、スープが美味しいし、あんまり野菜も苦くないね」
「栄養残ってるか知らないけど、だいぶ繊維壊して切ったから」
「凄いね、ナツってどこで料理覚えたの?」
どこ?と言われても。きっと指先の器用さと元々の向き不向きがあるのではないか?とも思ったが、ひとつだけ要因がある。
「親戚のおじさんが店やってて、長期休みのとき手伝ったりしてたからかな」
「え、ナツそんなことしてたんだ」
私、ナツのこと何にも知らないなぁ。と言った彼女の表情にもう軽い笑みはなく、少し疲れているようだった。
「その店、軽井沢にあるんだけど。行く?」
行くとしたら明日着いてすぐかな。休めないな。と考えていると速攻で答えが来る。
「行きたい」
「じゃあ決まり。美味しいホットケーキ出してくれるよ」
「え、楽しみ」
またへらへら笑い出した彼女は、だいぶ情緒不安定だなと思った。

