全身しっかりシャワーを浴びて乾き始めいたペンキを泡で落とし、楽屋で一息つく。
昼休憩を挟みましょう、となったらしく俺は髪も乾かさずぼーっと鏡の前で座っている。
どの角度から見ても晶は可愛かった。どうして俺が撮られているのか不思議な感覚に陥るほどに、カメラを持つ様は美しかった。
「あ〜あ、また晶のファン増えるよ」
美人で新進気鋭でそれでいてミステリアスで、そんなもん人気出ないわけがない。
世間は露出しすぎない完璧な存在感を求めている。
むしろ、そう仕立てあげた立役者は俺でもあるがどうにも遣る瀬無い気持ちが湧き出てしまう。
小柄な身体で顔より大きいんじゃないかっていう機材を持って、スタジオ中を歩く姿は少なくとも俺の心にドンピシャで。
振り向かせたい抱きしめたい。
こんなに感情の起伏が激しい現場は初めてだったせいか、どっと疲労感のようなものが身体にのしかかる。
それと同時に溢れ出る幸福感にも包まれるから厄介だ。
鏡に映る俺は、まさに苦虫を噛み潰したような顔をしていて、外からのノック音でようやく南月の顔を取り戻した。
「はい、どうぞ」
ドアが開いた先にいたのはカメラを持ってない晶だった。
「ナツ、お疲れ様。ごめんね初日からシャワー浴びせるようなことして」
「大丈夫、気にしてない」
「そっか、よかった」
「こっち座ってよ」
向かいにある椅子を指せば部屋に入ってきて、そして俺の後ろに回る。
「そこ椅子ないけど」
「知ってる」
「何してんの?」
濡れたままの髪に肩に掛けたままだったタオルが乗る。
小さい手が2つ、頭を抱えて髪を乾かしてくれるらしい。
「美人カメラマンのドライヤー付きの撮影って、最高だね」
鏡に映った晶は苦笑していて、ナツだけ特別だからね。と呟いた。
疲労感より、幸福感が上回った。

