何が不満なのか、唇を小さく尖らせてぼんやりと天を仰ぐ。



その間、撮影はもちろんのこと停止。



黙って渦中の人物を見つめる。



晶は少し時間を置いてパッと、花が咲くように笑った。




「絵の具欲しい!」




主語がないそれをスタッフがすぐに読み取り、遠くに用意しまーすと走って行くスタッフの後ろ姿が見える。




「あと、なんでもいいので、全身白でそれぞれコーディネイトお願いします」




スタイリストが返事をしてすぐに数着の服が用意される。


目配せで合図され、俺はツカツカとそこによって行くと服が充てがわれる。




「なるべく装飾品が少ないもので…これとか、髪もちょっとくしゃっと、寝起きで爆発してる感じで…」



手を伸ばす晶に腰を曲げて顔を近づけると、細い指が髪を触り、無造作にいじられるのを感じる。




「うん、これ、いい。かっこいい」




まるで、見惚れるように空気に溶けたその言葉に仕事中だということも忘れて照れそうになる。

撮影中とのギャップが凄まじ過ぎて可愛い晶を抱きしめたくなった。耐えろ俺。



「晶ちゃんはかわいいよ」

「下の名前で呼ばないでください」

「急に冷たいね」

「南月さんの中でわたしのイメージが悪くなっても気にしません」

「そこは気にしろ」



彼女のご所望のものが届くまで、待ってる間にもシャッターを切るべく再びライトの集まる場所に立たされる。


晶はカメラを構えてふらふら歩き、パシャパシャと何処かを連写。


先程とは打って変わった熱量の低さにスタッフ共々、俺も晶のスタイルを掴みかねている。


それ、俺にレンズ向いてなくね?っていう微妙な角度で連写し続けているから、つい喋りかけてしまう。



「晶ちゃん、こっちこっち。俺以外撮んなよ」




その声に反応してこちらを向いた晶。


レンズ越しに目が合い、嬉しくて嬉しくて。


ふいに笑った瞬間、シャッターを切られた。