「あーきら」
デレデレの顔で家から出た俺はものの数秒で晶の前に現れた。
「簡単なものしかできないよ?」
と、出してくれたのはシチューと、だいぶ偏りのあるサラダとスープだった。
「ねぇ、このサラダやばくない?野菜の比率やばくない?」
レタス8玉ねぎ1.5人参0.5
という謎の比率を思わずつっこめば、晶から鋭い圧が飛んでくる。
「ナツのはちゃんとしてるからいいじゃん」
あ、これ俺のなんだ。と認識したものはレストランに出てくるようなもの。レタス、パプリカ、玉ねぎ、トマトがボウルに入っている。
「この差はなに?」
「わたし野菜たべないの、基本は」
「え、晶ってそんな子だっけ?」
「いいじゃん、ナツに出してるわけじゃないんだから」
スープなんて晶のは最早卵のみ。
オニオンスープらしいそれは一つには具沢山で美味しそうなものがある。
「晶はいつも自炊なの?」
「いや、おばあちゃんがきたときだけ作るけど後はあんまり」
「いつもなに食べてるの?」
「いつもは食べない」
「は?」
「お昼を職場とか、大学で食べたら後は食べない」
まるで、エイリアンのようだと思った。不躾な眼差しを向けていると不愉快そうに眉根を寄せた。
「ナツは顔がうるさい」
「初めて言われた」
「じゃあこれから気をつけたほうがいいよ」
心得ておこう。
そしてなるべくこいつに栄養を取らせよう。という弱いものを守る精神が刺激された。

