恋愛戦争




晶の目尻を細め頬を桜色に染めた笑顔が好きだ。


小さな細い体で大地に根を張りしっかり立つ凛とした後ろ姿が好きだ。


俺の髪に触れ、浄化するように撫で付けてくれる指先が好きだ。


話すときにまっすぐ瞳をみる、ブラウンの双眼が好きだ。


風が吹くとふわりと舞うアッシュブラウンに指を通したときに、なに?と振り向くその全てが好きだ。



どうしてこんなに好きだったのに何も気づかなかったのだろう。


自分の感情の奥にある心にぴったりと隙間なく蓋がされていて、それを剥がすことができない限りはわからない。


俺の好きは、果たして恋愛の感情なのだろうか。


間違いを犯して、選択を誤ってはいないだろうか。


玄関先で足先だけを引っ掛けたサンダルを履いたまま立ち尽くす俺の想いは、どこに置いておけばいいのかわからない。


人生初、苦しい恋愛の始まりだった。



ーーー部屋を片付けると言ったのに、全くと言っていいほど手をつけないまま、持ってきたソファーに寝転がり天井の白い壁紙を見つめている。


それから、たぶん一時間は経った。


もうやだ。なんかやだ。といじけ始めている俺は脳内中にの恋愛初心者のクズだ。


駄々をこねる子供のように俺のことだけを好きになれと言えたらいいのに。



身体だけ大きくなった俺は天井を眺めることしかできない。


目の端にスマホの画面が光っているのが見えた。はぁ、と深いため息を吐いて起き上がりそれを手に取りまた座る。




《ごはんできたけど》



短い文章で送ってきたのはお隣さんである。