晶の住む部屋は1LDKの綺麗なところだった。


落ち着いた色合いで揃えられた端々に猫の置物やクマのぬいぐるみがあり、晶の女の子の部分をありありと感じた。


ベットが白くて、正直どきどきはしなかった。


俺にとって晶はとても清い存在で、触れたらそこから汚れていってしまいそうなほど綺麗ものだ。



「晶っぽいね。きれい」

「そう?まぁ1人で暮らしてるとなかなか物も増えないからね」

「友達呼んだりしないの?」

「時間あるとパソコンで撮影したもの確認したり、カメラいじってるから」



棚に並べられたカメラは埃など一切被ってなくて、大事に扱われていることが一目瞭然。



「聞いていいのかわかんないけど、なんでカメラやってるの?」

「聞くんだ」

「知りたい」



紺色のラグの上で胡座をかく俺と、足を伸ばしている晶。


少しだけ距離があるのがなんだかもどかしかった。


俺は手に入らないおもちゃをどうにかして手に入れようとしてる、未だにクソガキである。



「人が生きているうちに写真を撮りたかったの、それだけ」

「そう」



死の話はしてはいけないものだとラインを引いていたから、こうも変化球で来られると対応に困る。


いや、聞いたのは自分なんだけど。



「ナツは?どうしてモデル始めたの?」

「聞きたい?」

「じゃあいい」



晶が入れてくれたオレンジジュースが甘酸っぱくて、まるで中学生の恋沙汰のようだ。



「高校の時に知り合った人にやってみないかって誘われた。それで興味持ってやってみた」

「ふーん」

「もっと興味もてよ」



晶の人の目を見て話す癖は未だにそのまま。綺麗なブラウンの瞳が揺れる。



「金髪、ナツじゃないみたい」



明日黒染めしようと強い決意をした。