「なに、なんでここにナツがいるの」



昔よりだいぶ当たりがきつい気がするがそんなことは気にしていられない。社会に飲まれて強くなったのだとポジティブな解釈をする。


そして、ナツとまた呼んでくれることが心底嬉しい。


ここは、デザインやブランドを立ち上げている大手の子会社で撮影などを一気に担っている業界では有名なカメラマンも多数所属している場所である。



「なんで、って晶を探してたからだよ」

「探さないで」

「見つけた」

「じゃあもう用は済んだでしょ?」



遊んでる暇はない、とでも言いたげに応接間の入り口で腕を組む美人は、相変わらず白い肌に細い身体をしていた。


そんなんで、重い機材を持てるのだろうかと酷く心配になった。



「俺、モデルやってるの」

「知ってるよ。いうこと聞かない新進気鋭の若手がいるって有名だもん」

「ありがとう」

「褒めてない」



机を挟んで座る俺はそっと立ち上がる。


中学生の頃にはあまり感じなかった身長差をありありと感じ、晶が雪のように脆く崩れそうに見えた。



「いま、写真集制作の話が出てて、カメラマン丁度探してたの」

「そう、ここには腕のいい人がたくさんいるよ」

「わざわざここまで来て他のやつに頼むと思うの?」



ちょっと、睨み合った。


目が合うことがとても嬉しかった。今でも対等に話せる関係で居られるということが、例えそれが無意識だったとしても。



「晶に俺を撮ってほしい」

「だめ、わたしまだアシスタントだもの」

「俺のとこの社長に頼んだから、そろそろお前のとこの社長から直々にオファーが来ると思うけど?」

「なんでそんな勝手なことするの」



晶の所属するカメラ部隊の子会社を担う大手の会社とは、俺の所属するモデル事務所の会社でもある。


何か強い縁で繋がってない限りは、こんなことありえなかっただろう。



「それ、脅し?」

「そう捉えてもらってもいい、俺は晶に撮られたい」

「無理、そんな理由」

「晶の撮った写真を見てそう思った」



晶が練習用にと撮ったモデルたちの写真を見て、燃えるように嫉妬を抱いた。


綺麗な双眼にレンズ越しに見つめられたのかと思ったら、撮られたモデル全員に殺意が沸くほど。