俺が小学生4年生という第1期反抗期真っ最中の頃、隣に引っ越してきた同じく小学生4年生の優等生が晶だった。


今となってはなにが嫌で反抗していたのかはわからない。でも親にも先生にもコンビの店員にでさえも反抗的だったことを認めよう。


対して、隣に引っ越してきた晶は綺麗な祖母と父親と3人で暮らす少し他の家庭とは違うものの、素敵な家族だった。

引っ越し当日の昼に公園から走って帰ってきた俺は玄関前で見知らぬ少女にぶつかった。それが晶だった。



「隣に引っ越してきたものです。よろしくお願いいたします。」


綺麗な箱に入ったお菓子をくれた祖母の隣で一緒に小さくお辞儀したワンピースを着ていた少女。


俺と同じ小学校に行くということがわかると大人たちは少しだけ盛り上がって、すぐに冷めて、帰って行った。

祖母の隣でずっと微笑んでいた彼女は反抗、なんて言葉を知らないんじゃないかっていうくらい優等生だった。


おばあちゃん、お父さん、行ってきます。それから毎日聞こえる朝の挨拶に、反抗期の俺はだせぇ、となにも言わずに家を出るものだから少しばかりバツが悪い思いで、晶が嫌いだった。


学校では、優等生の転校生ということで最初こそは悪目立ちし、まるで見世物ののうな期間があったものの、そんなのは数日で。


純粋で、優しさの塊の子供達はすぐに仲良くなった。


そして、そんな晶が嫌いだった。


帰り道友達と別れたあとにひとりで歩き始めたのに、途中で立ち止まりしゃがみこんでひとりで泣く晶が、嫌いだった。


泣いたあとに、なんでもないような顔をしてまた歩く晶が嫌いだった。


俺は、晶がとても嫌いだった。

どうしてと問われてもわからなかった。それでも常に優等生で純粋で笑顔な嘘つきのように思えて、大嫌いだった。