「あ、ごめん圭吾、今から彼女を学校案内しなきゃなんだ。」
「へえ~」
圭吾がじっと彼女を見る。
その眼はなんだか威嚇しているようで、彼女も感じ取ったのか、すっと私の後ろに回った。
「ちょっと、なんつー目をしてんのよ。」
「べつに。」
圭吾は彼女から目を逸らすと、私を見た。
「放課後さ、暇なら奏多と映画いかね?前言ってたやつ。」
「何時の?」
「18時40分。」
「いいよ、じゃあ後で合流するから先いってて!」
「ほーい。」
圭吾はもう一度ちらりと芹沢さんを見てからさっさと教室を出ていった。
「ごめんねえ~あいつ、ガキだからさ…」
苦笑いしながら後ろを振りかえると、芹沢さんはぼーっと圭吾の去った後を見つめていた。
(え…)
「…今の人、隣のクラスのひと?」
「え、あ、うん。幼馴染なんだ。」
「ふーん…」
なんだか変な焦りを感じながら答えると、ちょっと照れたように芹沢さんが笑った。
「好きなの??」
「えっ!!!???」
思いがけず言い当てられて、一気に顔が熱くなる。
「だって、顔に書いてあるよ。」
「そ、そそそそそそんなこと、ないよ、あんなやつ!」
「そうかなあ~~?」
「い、いいからいこっ!」
私はくすくす笑っている彼女を強引に教室から引っ張り出すようにして、廊下へと出た。
