しかし、その想像がなかなか現実になることはなかった。
授業を終えると芹沢さんはあれよあれよという間に、クラスの子に囲まれていた。
「ねえ、東京のどこから来たの?」
「えと…」
「いなかでしょー?ここ!」
「そんなことないよ、空気が気持ちいいとこだもん。」
「ねね、どうしてこっちにきたの?」
「部活は?」
気づけば隣のクラスからも野次馬が来ていて、どんどん質問されるたび、彼女は戸惑いながらも笑顔で答えていた。
私は人の波に、半ば押し出されるようにして、良子の席に向かった。
「ねえ、すごい人。」
「ほんと。まあ転校生なんてなかな来るもんじゃないしね。」
「それに美人だし、彼女。」
良子の声に、私もうなづいた。
「イケメンの夢も消えたな~」
「まだ期待してたんだ。」
「まあね。彼氏ほしいし。」
「先輩は?」
「別れたー」
「え、はやっ。」
良子の突然のカミングアウトに私はのけぞった。
噂が回るのは早い。
とくに高校に3クラスしかないうちのような田舎は弾丸の速さで噂が回る。
「いつ?」
「三日前。」
「言ってよー」
「どうせ噂で回ってくるもん。」
「まあそうだけどさ。」
