その日、朝から教室はざわついていた。
みんな、例の転校生の話で持ち切りだった。
「すっごいいけめんらしいよ~」
「え?女じゃないの?」
「すっごいデブって聞いたけど…」
「なんか、病気でこっちに引っ越してきたとか…」
「夜逃げしてきたってきいたよ。」
「みんな、好き勝手言ってるね~」
苦笑する良子に私も苦笑いしながらうなづいた。
「お~い、授業はじめっぞー」
担任が入ってくると、さっきと打って変わり一気に教室中が静まり返った。
あわてて自分の席に戻る生徒。
担任はそんな私たちをぐるりと見渡し、席に着いたことを確認すると、入れ、と扉のほうへ呼びかけた。
転校生が入ってきた瞬間、空気が変わったような気がした。
まるで童話に出てくる白雪姫のように色の白いきれいな顔。
すらりと伸びた足にほそい体は、こんな田舎のださい制服もモデルが着たらこんな風に見えるのか、と思わせるほどだった。
全員が息をのむのがわかる。
彼女は黒板の前に立ちまっすぐ私たちを見ると、あの笑顔でにっこりと笑った。
「…芹沢美和子です。東京から来ました。仲良くしてください。」
「…」
反応がないクラスに戸惑ったのか、先生を見上げる。
「よろしくねー」
良子の声がぽつりと響いてから、次第に拍手が上がった。
「かわいー」
「やばーい」
女の子の声が上がり、男の子の興奮した声も上がる。
さっきまでの緊張感がほぐれたのか、彼女は拍手に包まれ小さくお辞儀した。
