その言葉だけで、25センチの髪も惜しくなかった。
結局、惚れたものの負け。
それから私はずっとショートをキープしている。
私は目の前のうっすら茶色の頭を見て溜息をついた。
「ほんっと…」
「は?何か言った?」
私の言葉に圭介が反応する。
「なんでもなーい!」
「なんだよ気になんだろ〜?」
「なんでもないって!…この鈍感猿!」
「はぁ〜?お前!今のは聞こえたぞ!」
わざと自転車をグネグネと揺らす圭介にしがみつき、私はドキドキしながらも幸せだった。
思えばこの時、良子に従って告白していればーー
少しでも気持ちを伝えていればーー
もしかしたら未来は変わっていたのかもしれなかった。
髪を切った時のあの勇気をもう一度…
踏み出す勇気をもう一度…
持つことができていたならば。
