少し歩くと、街の雰囲気が分かる。

この街は、穏やかな風が流れてる……

この雰囲気は居心地が良さそうだな……



そんな事を思いながら、街をぶらぶら歩き続ける。

私には地元と呼べる場所がない。

『地元愛』や、『地元に帰る』

なんて言葉は、私には無縁な言葉だ。




この街は何となく、
『知り合いの直(ナオ)くんの雰囲気が似合う街だ』
と感じた。

直くんは、私が1人で生きていくと決めた時に最初に出会ったダンディーなおじ様。

今日みたいに、ぶらぶら道を歩いていたら、お財布が落ちていたのを拾って、警察に届けたのがきっかけだったりする。

それから、何かと気にかけてくれる直くん。

学校に行かない私に見兼ねて、勉強を教えてくれたりもした。

生きていく上で必要な事だからって忙しいのに時間を割いてくれた。





私の足は自然と細い道に進み、クネクネと歩いていると、ふと目に止まった喫茶店『Kalmia』(カルミア)。

「大きな希望か…」



何気無く入ってみた。

ドアを開けると、
カランカランと音が鳴った。

いい音・・・・