近くには、何もない。

水もラップのゴミも、全部持ってくれたみたいだ。

「行くぞ?」

「…うん」

いやだ、いやだ。

「ね、ねぇ」

お願いしたら、いいよって言ってくれるかな。

言ってくれないよね。

「ん?」

「…何でもない」

困らせることは、やっぱいいや。

「言えよ」

「えー…」

松木の方を見ても、松木は前を見たまま。

「言えって」

「……下降りたら、すぐ電車乗って帰る?」

「…なんで?」

「帰っちゃうのかなーって思ったから」

言葉を濁せば、大丈夫かな。

「すがちゃんが帰るまで帰らないから安心しろ」